2016年9月22日

フィリピン軍部、ドゥテルテ大統領の米同盟関係シフトを懸念表明

フィリピン軍部、ドゥテルテ大統領の米同盟関係シフトを懸念表明 

大統領のアメリカとの同盟関係にヒビをいれる発言に揺れるフィリピンですが、
フィリピン軍はアメリカ軍との同盟関係を大切にして継続したい事を明確にしました。

 ロレンザーナ国防相は「われわれは依然として彼ら(米軍部隊)を必要としている。なぜなら、彼らはわが軍が持っていない偵察能力を持っているからだ」と語った。
 フィリピン国防大学の元学長、クラリタ・カルロス氏は、ドゥテルテ氏は米比同盟の重要性についてもっと徹底的に助言を受けるべきだったと指摘。「米比関係は実に深く、広範に及んでいる」とし、「ドゥテルテ氏がもっと適切に報告を受けていたら、こうした発言をしていなかっただろう」と語った。
強権を発動しているドゥテルテ大統領ですが、軍の支持を完全に得ているわけではないようです。


THE WALL STREET JOURNALより
http://jp.wsj.com/articles/SB10367111121010623688804582324733653811106

フィリピン軍部、大統領の米同盟関係シフトを懸念

【マニラ】フィリピンのドゥテルテ大統領が何十年間にも及ぶ米国との同盟関係をひっくり返そうとする動きを見せるなか、フィリピン軍の内部では懸念が広がっている。軍は同大統領が最も味方に付けておく必要がある組織だ。


 クーデターやいわゆる「宮廷内の陰謀」が発生しやすいフィリピンでは、歴代大統領が危険覚悟で軍部に対峙(たいじ)してきたのをドゥテルテ氏は十分承知している。ポピュリスト的な指導者であるドゥテルテ氏自身はどうかと言えば、大統領就任後11週間の大半を基地訪問に費やしており、兵士の給与を2倍にするという公約を繰り返し、軍の支持取り付けに努めてきた。

 15日にも精鋭部隊「スカウト・レンジャーズ」の基地を訪れ、これまでの各自の業績を称えて、新しい「グロック」拳銃を1カ月以内に兵士全員に支給すると約束した。
ドゥテルテ流を軍に説得できるか

 ドゥテルテ氏は、「イデオロギー上の境界線」を越えて内外のかつての敵との和平を追求するつもりだと兵士たちに説明した。しかし、フィリピンの軍事情勢に詳しい関係者らは、このような「境界線」を同氏と一緒に越えるよう軍指導者を説得するのは難題だろうと述べている。

 ドゥテルテ大統領を取り巻く古参軍幹部のなかにも、大統領のシフトにあぜんとしている向きがいるようだ。例えば、元将軍で在ワシントン比大使館付武官でもあったデルフィン・ロレンザーナ国防相は14日の議会委員会で、ドゥテルテ氏が米軍アドバイザー(米軍特殊部隊)にミンダナオ島から退去するよう望んでいるのは誤りだと述べた。同島では、米軍アドバイザーはイスラム過激組織アブ・サヤフに対するテロ撲滅作戦を支援している。アブ・サヤフの下部組織は今月に入り、ダバオ市でテロ事件を起こし、15人を殺害した。

 ロレンザーナ国防相は「われわれは依然として彼ら(米軍部隊)を必要としている。なぜなら、彼らはわが軍が持っていない偵察能力を持っているからだ」と語った。
 フィリピン国防大学の元学長、クラリタ・カルロス氏は、ドゥテルテ氏は米比同盟の重要性についてもっと徹底的に助言を受けるべきだったと指摘。「米比関係は実に深く、広範に及んでいる」とし、「ドゥテルテ氏がもっと適切に報告を受けていたら、こうした発言をしていなかっただろう」と語った。

対中関係の「切り札」放棄することに

 ドゥテルテ氏はオバマ米大統領に対して侮蔑的な発言をし、南シナ海における米軍との共同巡視活動から手を引くと述べるとともに、中国とロシアからの武器購入を開始する可能性にも言及した。米軍との共同巡視活動は、中国の侵入からフィリピン海域を守る目的もあって実施されている。

 ISEAS-ユソフ・イシャク研究所(シンガポール)の上級フェロー、イアン・ストーリー氏は、フィリピン軍将校らはこれまでずっと米軍と手を携え、共産主義者やイスラム原理主義的な反乱勢力と戦ってきたとし、それだけにドゥテルテ氏の発言には「仰天して」いると述べた。

 また同氏は、ドゥテルテ氏は中国との不均衡な対立の中で切らなくてはならない一つのカード、つまり「米国の安全保障の傘」という切り札を放棄しようとしていると指摘。このことを将校らは憂慮しているのだと語った。
 ドゥテルテ氏は、南シナ海への中国の進出を阻止できなかったのは米国に非があると述べた。しかし軍幹部らは、軍需品引き渡しや定期的な合同演習、偵察飛行など米国の支援がなかったら、フィリピンは中国に思うがままにされて状況はもっと悪化していただろうと述べている。

先手を打って米国に強硬に?

 あるフィリピンの国防専門家は、ドゥテルテ氏が自分のメンツを保つため、米国との亀裂を引き起こそうしているのではないかと懸念している。同氏の着手した「麻薬戦争」では、警察や自警団が3000人以上を殺害しており、ワシントンから反発が見込まれる。それを見越して、あえて先手を打って米国に強硬になっているのではないかというのだ。
 米比同盟関係は近年、ドゥテルテ氏の前任者アキノ元大統領によって補強された。中国の台頭に対する懸念を米国と共有したためだ。2014年には両国は防衛協定に調印し、フィリピンの基地に1990年代初頭以来初めて米軍を駐留させる道を開いた。
 マニラの米大使館当局者は、両国間の同盟は「安定の土台」だと述べ、二国間協力に影響するような正式の連絡は、フィリピン当局者から一切来ていないと強調した。
 軍部の反感を買う危険は、アントニオ・トリリャネス上院議員(2003年に海軍士官としてクーデター未遂事件を指揮)が、今年春の選挙運動中(訳注=同議員は副大統領選に立候補した)に指摘した。

 トリリャネス氏はこの選挙運動中、「(ドゥテルテ氏を倒すため軍部が)人々を集めるのは極めて簡単だろう」と発言。和平工作のためドゥテルテ氏が接近している共産党ゲリラに対し、軍部がアレルギー反応を持っているからだと指摘していた。
 トリリャネス氏は先週、ドゥテルテ氏がオバマ大統領を「売春婦の息子」呼ばわりしたことは「あまりに大きな誤り」で、米比同盟関係とフィリピンの安全保障にとって有害だと述べた。そして「世界で最も力のある国家に平手打ちし、そのままで済ますことなどできない」と語った。

大統領にとって軍の支持は不可欠

 フィリピンの歴代大統領にとって軍の支持は不可欠だ。グロリア・アロヨ氏は大統領在任当時、広範な軍の支持を取り付けたおかげで2003年のクーデター未遂を乗り切った。しかし彼女の前任者ジョセフ・エストラーダ氏は01年、大衆蜂起によって大統領職を追放された。これは将軍たちが彼に背を向けたためだった。これとは対照的に1986年から92年まで大統領を務めたコラソン・アキノ氏は、忠実な軍幹部のおかげで、数多くのクーデター未遂を切り抜けた。
 ドゥテルテ氏に戻れば、軍部は公には同氏を支持している。前出のカルロス氏は、ドゥテルテ氏は依然として国民に人気があり、将軍たちを味方に引き入れる時間があると述べた。そして、ドゥテルテ氏に対し、一つの基本的な点、つまり「米国人は同盟者であって敵対者でない」ということを心に留めておくよう助言すると語った。

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